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2023.10.11 第11回大東建託賃貸住宅コンペ計画地を語る|進藤強

強

ビーフンデザイン メンター建築家

双葉町の状況を知って思うこと

今回のコンペは、単純にここで何かをやればよいということではなくて、たとえばなりわいのある場をつくるために何かをやるにしても人が居ないとか、風評被害に立ち向かわないといけないとか、その前にクリアしなければいけない問題が山積しています。日本で誰も向き合ったことがない課題を解決する壮大なテーマですよね。でもだからこそ、世界的に発信できる何かが生み出せると思います。
原発の被害を受けた場所から、日本に閉じることなく世界に向けたメッセージが発信できる場所をつくっていくこと。そのことがこの双葉町でできることであり最大の可能性ではないでしょうか。

コンペの発信情報から、もしこのコンペに参加するなら、どの敷地を選ぶか(全部でも、一つでも)

どの敷地を選ぶかということより、まずはこの場所全体が持つ仕組みから考えてみるべきだなと思います。たとえばここをある特区と位置付け(ベルリンの壁ならぬ、双葉の壁)税制を変えてみるぐらいのことを考えて欲しいんです。若いIT起業家を集めるために、彼らには3年間税金なしで住んでもらうことができるとか、同じようにアーティスト活動をする人たちにも観光も含めて場づくりを担ってもらう観点から自由にアーティスト活動できる場を提供するとか。
 
ジョージアでは(アジアとヨーロッパの中間に位置する人口400万人弱の経済規模の小さな国です)IT事業の法人税が0%で起業活動しやすい環境をつくり移住を誘致しています。こういったコンペにおいて、そんな仕組み変えの想像にまで及ばないかもしれないのですが、僕だったらそこまで変えてまち全体のあり方を考えると思います。

IT特区や企業特区をつくって人を呼び込む。とにかく、インパクトある何かを発信しなければ、今ある課題の本質的な解決には至れないし、ここでそういった解決が実現すれば、それは日本の税制、政治まで建築からのアプローチで変えれる可能性へとつながります。

その場所でどんなことができると想像するか

建築だけをつくる提案をして、その風景には一見夢があるように見えるかもしれないですが、それは机上の空論でしかありません。実際のまちが動いていくためには、建築をつくるには資金調達が必要になるし、そのためには建築を建てた後にどう運営維持していくかの仕組みも必要で、その仕組みがお金を出しても良いと納得させられる事業でなければ融資してもらうことはできません。つまり成立しない。何をやるにしても、どのように回してお金を生み出していくかがなければ成立しないんです。でも同時にそれは、お金のことだけでも成立しません、双葉町に関わる人が自分のこととしてまちを考え、建築を含めたまちづくりに携わっていかないとダメです。
もし僕が本当にこの場所で何ができるかをやるとしたら、まずは土地や建物を購入して、そこから事業を立ち上げる中で必要な建築のあり方を模索して行きます。そんなふうに入り込んで、自分がここで責任を負って何かをやるとしたら、と想像して欲しいです。

応募者に向けてのメッセージ

今回これだけ壮大なテーマに向き合うのは大変なことだと思いますが、双葉町の現状を考えた時、人が居ないことをマイナスと捉えるのではなく、人がいないからできる提案をやらないと意味がないと思います。
今僕は、人口が300名ぐらいの離島で何ができるかを模索していますが、この時代に、ないことから想像できる環境があることにワクワクしています。ましてやコンペは自由に発想して提案することができる機会です。社会に出るとそんな機会はほぼないですが、制度や仕組みの捉え方を変えることで実現することができる機会は増えているようにも思います。頭をより柔軟にして、今の双葉町だからできるんじゃないかと思えるまちのあり方、場所をつくることで、世界に大きなインパクトを与えるぐらいの発想をしてほしいし、そんな提案を期待しています。