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2023.10.06 第11回大東建託賃貸住宅コンペ計画地を語る|嶋田洋平

嶋田さん写真

嶋田洋平  

建築家・2020年から双葉町のまちづくりに関わる

  

双葉町とのかかわり

僕は2020年から双葉町の復興のお手伝いをしています。
 
昨年の2022年8月に東日本大震災の災害による避難指示が解除されましたが、双葉町は最後の解除地域だったので、復興に向けた取り組みやまちづくりがなかなか進んでいない現状があり、そんな時に双葉町の復興にずっと関わってこられた元国土交通省の佐々木晶二さんからご相談をいただきました。
 
双葉町のこれからを考えると、1、2年先の目先のことだけではなく、10年、30年、50年先の未来を見据えて考える必要があるのではないかと思います。僕たちはまずは地域の人たちに話しを聞いたり、日本国内だけでなく、世界の中での双葉町の位置付けも含めてどう考えたらよいのか、有識者の方にお話をうかがったりしながら、将来の双葉町のあり方、その方向性についてを今考えています。

双葉町においてのこれからのまちづくり

双葉町は地震や津波災害による被害だけでなく、原発事故による被災地なこともあり、10年間以上空白の時間ができてしまいました。復興のあり方や未来の姿について、いろいろな方のさまざまな意見はあると思います。
 
世界的に見ても大変な事故被害があった場所であるということの意味、双葉町だから考えられること、双葉町だからこそ発信できること、悲しい出来事とこの状況を、何かプラスに変えられるような未来のあり方がないものだろうか?そんなことを常に考えています。
 
まだ具体的な何かをイメージできているわけではありませんが、この状況がこれからの双葉町のあり方にとって強みとなるような、そんな将来像を考えられたらと思っています。

双葉町に住む(賃貸住宅)ために必要とされる仕組みとは

今回は賃貸住宅を考えるというテーマですが、賃貸住宅が建築物である必要があるのだろうか?ということを考えてみてはどうでしょうか。
 
震災による津波被害の被災地では建物を建ててはいけないエリアが設定されていることもあります。そういうエリアでは、建物でなければいいのではないだろうか? という発想で、ある種の常識を疑ってみることも大切だと思います。
建物が建てられないということは、自ずとほかの都市や地域とは違った風景が生まれるかもしれない、というように前向きに捉えてみてはどうでしょうか。
 
人間が暮らさなくなったエリアに、綺麗にアスファルトで舗装された道路が本当に必要なのか、20世紀型の都市計画が前提としていたインフラの供給が本当に必要なのか。
 
それらがなくても成立する地域がつくれたなら、現代の日本には見られないような、江戸時代以前のような野山の風景が広がるかもしれないですよね。
僕が双葉町に可能性があるかもしれない思っている部分は、実はこういう部分です。コンペに参加する皆さんがそんな可能性を探ってくれたら嬉しいです。

応募者の皆さんへ

双葉町のような被災した地域では被害を受けた建物の解体費用に対して国からの補助が出されることもあって、まだ使えるような建物でも解体されてしまうことを目の当たりにして残念な気持ちになります。
 
被災した方たちが生活を再建していく上では仕方のない面もあるかもしれませんし、こういった支援制度は重要ではありますが、一方で地域のほとんどの建物が壊されてしまうことで、過去からのつながりや文化が地域に残っていかないという現実に対して、本当にこれでいいのだろうか、というモヤモヤとした気持ちもあります。
コンペに取り組む若い皆さんには、そういったb部分も含めて、これって本当に正しいのだろうか、と問うてみて掘り下げて何か新しい提案をしていただけたら嬉しいです。
今回のアイデアコンペで、建築に携わる皆さんには、本当は「こういう地域や、社会のあり方が正しい」と声を大に伝えてくれる提案をしてみてください。