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2023.09.29 第11回大東建託賃貸住宅コンペ計画地を語る|武藤祐二

ポートレート

武藤 祐二  

ふたばプロジェクト事務局次長

  

双葉町とのかかわり

私は2023年3月まで広告会社に勤めていました。最後は人事・人材開発に携わり、シニア世代のキャリア開発の仕事もやっていました。内閣府では、民間の人材を求める地方自治体の情報を取りまとめて企業に情報発信する「地方創生人材支援制度」というものがあったり、地方の中小企業が大企業の人材を求めていたりするので、その情報を会社を出てチャレンジするシニアの方々に繋いで、相談にのっていたのです。仕事としては観光客誘致や、名産品のプロモーション、まちのブランディングなどが主でしたが、2年前に福島県南相馬市から依頼があり、それが移住定住課の仕事だったんです。その翌年には第二原発があった福島県富岡町から。初めは大変な仕事だけど、行く人がいるんだなと思って見ていたのですが、昨年(2022年)双葉町からも同じ問い合わせがあり、全社に募集をかけたところ手を挙げる人がいませんでした。申し訳ない気持ちもあり、事務局をやっていた私は11月頃に現地を見に双葉町を訪れました。その時、これは大変だなと。
実は私は2023年には会社を終わる年齢だったので、自分が行くことを家族に相談すると背中を押してくれました。かつその後町役場の人たちや町長との面談(その時は半分お断りする気持ちもあったのですが)をする中で、みなさんがとても前向きで面白い方々だったので、移住することに決めたのです。4月に来たばかりで住んでまだ半年です。
 
いま私は2019年に設立された一般社団法人「ふたばプロジェクト」のメンバーとして活動しています。この組織はまちづくりを民間主導でスピーディーに進めていくことを目的としています。
いまの仕事は町役場の仕事を受託しており、移住定住促進の事業計画づくり、PR、イベントなどをどのように進めていくか検討中です。それといままちに住んでいらっしゃる方のコミュニティを支援するという意味で2、3ヶ月に一度、URなどと立ち上げた「ちいさな一歩プロジェクト」で「ふたば飲み」というイベントを企画し、そのお手伝いをしています。
あとは旧町民の方の家を見回る部隊(戸別巡回)をつくって、残された家が気になっていらっしゃるみなさんに登録をしていただき、70歳ぐらいのシニア男性10名ぐらいでチームを組んで毎日見回っています。あとは町営墓地の清掃など、町外居住町民の方のための支援もやっています。
それから双葉町には各地の学校などが復興状況を確かめるツアーに訪れるのですが、その時の案内ガイド役を「ふたばプロジェクト」の復興支援員が行っています。より詳しい話を聞きたいとの依頼がある場合は私がまち歩きを担当して、役場の考え方やこのまちの将来についてを私がどう考えるかを話したりしています。

双葉町においてのこれからのまちづくり

私がここに来ていちばんに感じたのは、このままだとこのまちは忘れ去られてしまうという危機感でした。まちがなくなるというか、かつては大変なことがあったまちと思い出されるくらいで、ほかは何も誰の記憶にも残らないのではないかと思ったんです。2022年の避難指示解除後は30名だった住民が今は86名になり、復興支援員の女性は家族で住み、子どもも育てているのでまちとしては生きているのに、知られていない状況では人も増えず、まちづくりが進みません。
昨年の最後に避難指示解除がなされた歴史的な日がメディアに取り上げられて以降は、まちの状況が全国ネットに発信されることはなくなってしまったので、積極的な情報発信がまずは必要だと思います。
そのために何が必要かという具体的なところまでは整理がついていないのですが、「ふたばといえば◯◯」と言えるような、その何々の部分をつくっていかなければいけないと思います。他のまちにはない何か、唯一性、個別性をつくることがまちづくりなのではないでしょうか。

双葉町に住む(賃貸住宅)ために必要とされる仕組みとは

事業収支しか考えられていない建物をただ建てるだけの開発ではなくて、まちにある施設との連携が取れたアパートであったり、いまこのまちではアパートの経営だけでは人は集められないため、人を呼ぶ魅力づくりへの提案が多々出てくることをとても期待しています。
私はフタバリーヒルズをつくれたらよいのではないかと仲間によく話をしていて、同じような住まいがたくさん出来上がってもいずれゴーストタウン化するのは目に見えているので、さまざまな階層の人を受け入れ、ひいてはグローバルな広がりも受け入れられる場所となっているのが理想です。個性的で意欲ある人たちが自由なかたちで住めるさまざまな形、スタイルの民間賃貸物件があるとよいなと思います。
そしてその場所の共有施設はできればまちに提供していただきたい。
最初のジャンプはうまくいかないかもしれないですが、とにかく高く打ち上げて話題となることが重要で、そういった何かをやらないことには始まらないと思います。

応募者の皆さんへ

双葉町では、本当に少しずつ住民が増えてきています。また、双葉町の復興やこの場所についてを一緒に語り合える人たちの輪も広がっています。先日双葉町産業交流センターで行われた「ちいさな一歩プロジェクト」の「ふたば飲み」には、170名程度の方が参加してくださいました。今後、どうやってこのまちを発信していくかと同時に、双葉町にかかわり、一緒に考えてくださる人の輪を広げていく活動も活性化させていく必要があると思っています。今回の大東建託さんのコンペで、みなさんが双葉町に目を向け、これからのまちについて考えてくださることはとても嬉しいです。どういった提案がなされるのか、双葉町の多くの人にも見てもらうことができたらと思っていますし、同時に、このコンペを通じて双葉町をもっと知っていただける機会になることを願っています。

ふたば飲み開催の様子
ふたば飲み開催の様子