2022.09.16 第10回大東建託賃貸住宅コンペ過去受賞者コメント|平川 慧亮さん
若い時期にコンペに挑戦すること、そして現在
卒業制作を終えて大学院に行く予定だったが、金銭的理由で行けなくなった。フリーで過ごすなか、外部(建築)とかかわる方法がもはやコンペしか残されていなかった。いろいろなコンペに挑戦するが、当然すぐには結果はでず、ひどい時は提案書の郵送費用を友人に借りる程だった。そんななか、友人と共同でだしたコンペが佳作に選ばれた。ギリギリ自分と世の中が繋がった気がした。コンペは私にとって、日々のささいなことに目を向けるきっかけを与えてくれた。また狭い視野を開放し、そこで抱いた違和感をデザインに置き換える場であった。
コンペに1人で取り組む場合、学校の設計課題や仕事と大きく違うのは、締切を守れなくても誰も困らないし気づかないという点だ。ただ自分がアイデアをかたちにできなかったという最も辛い結果だけが残る。コンペを調べて、テーマを読み、日常の生活のなかでヒントを探す。その積み重ねがきっと今の自分の思考プロセスをつくってくれている。考えていくなかでふとアイデアが浮かんだ時、誰にも求められていないのに提案書をつくっている。きっとそういう時が一番デザインをしていて幸せな時だと思う。コンペに挑戦する経験を多くの人にして欲しい。
「賃貸住宅とSDGs」について
賃貸住宅で新築を条件にする人はどれくらいいるだろう。
新築は綺麗、新しい、クリーンなイメージがある。しかしリノベーションやヴィンテージ・マンションなどのキャッチコピーをつければにとの見る目がかわり、それらを条件にあえて古い物件に入りたがる人たちもいる。
新しいものが古くなって壊わすことは簡単だが、使い続けるなかで古さが新しい価値観を生みだす。そんな賃貸がができれば、持続の可能性は広がるのではないかと感じている。
まるでヴィンテージ・ジーンズかのように使う人にフィットしていくような柔らかい建築が必要だと思う。
2011年武蔵野美術大学建築学科卒業/東畑建築事務所 所属
平川慧亮さんが応募した案