2026.10.20 第14回大東建託賃貸住宅コンペ第14回|有識者インタビュー|吉里裕也

吉里裕也
未開の場所の可能性への挑戦を
未開の場所の可能性への挑戦を
設計から不動産、再生事業へ。そして都市再生まで
僕は建築を学び、ディベロッパーで働いていました。約 5 年ほど在籍し独立して設計の仕事を始めました。
最初は中華料理店の内装や集合住宅の企画、古民家のリノベーションなどの仕事をしていたのですが、古い建物が壊されていく状況に違和感がありました。
そんな中、同じ問題意識を持っていたOpen Aの馬場正尊さんと出会い、遊休不動産を再生して新たな価値を見出す「R不動産」を一緒に立ち上げました。
そして仕事で縁のあった東日本橋や馬喰町エリアにポテンシャルを感じたことがきっかけとなり、建物を単体で扱うのではなく、エリア全体を更新していく仕組みに興味を持つようになりました。
良い建物をつくっても数年で使われなくなったり壊されたりする状況を見ていて、建築を長く継続させていくには、事前の企画や運営計画が必須であることを痛感したのです。
そのため、不動産や事業計画、リーシングまで含めて関わる必要があると考えるようになり、会社としてそれらも担う体制を整えていきました。
その後、林さん(審査委員)や馬場さんと共に、自分の空間を自分で編集できるサービス、「ツールボックス」の立ち上げや公共的な不動産事業である「公共R不動産」の立ち上げなど、活動は徐々に広がっていきました。
さらに、行政との関わりも増え、リノベーションスクールをはじめとする都市再生の取り組みにも関わるようになりました。
高岡との関わりと取り組み
高岡のまちに行くようになったのは、高岡でマーケットの企画運営をしていた知人から相談を受け、赤レンガ倉庫(旧銀行跡地)の利活用に関するサウンディングプロジェクトのコンペに参加することになったのがきっかけでした。
サウンディングは、建物の活用可能性について民間にヒアリングし、事業の方向性を探るプロセスです。その調査と提案を行ったのが最初の関わりでした。
その経験から、高岡はポテンシャルがある一方で、その魅力や資源を生かすための仕組みづくりにはまだ多くの可能性が残されていると感じました。そしてそれはネガティブな感覚よりもむしろまちの伸びしろのように感じられました。
仕事を通して地元のプレイヤーや若い世代とのつながりも増え、彼らはとてもエネルギーが強く、まちとして転換期にある高岡で何か挑戦したい気持ちになりました。
現在、山町筋で2軒、金屋町で2軒の空き家を中心に、単一の建物を手がけるのではなく、分散型でネットワークさせながらまち全体を舞台として複数の拠点を設計・運営しています。
施設としては宿泊、イベント・ギャラリー、テナント・オフィスなどを組み合わせた構成で、複数の物件の設計を同時に行い、解体や準備工事も含めて並行して進行中です。
この取り組みで最も重要なのは、場所をどのように運営していくかです。
そのため宿泊や施設運営については、外部の専門チームと最初から連携して始めました。
運営ノウハウを持つ会社と組むことで、設計だけでなく実際のオペレーションまで含めてさまざまな想定や仮説を立て、施設の継続的な運営とエリア全体の発展を見据えながらプロジェクトを進めています。
一方で、最終的な運営を担うのは地域の人であってほしいと考えています。
特に番頭や店長のような役割を担う人材は、地域の中から発掘し、育てていきたい。
そうした担い手を生み出していくことも、このプロジェクトの重要なテーマの一つです。
高岡の魅力と可能性、そしてコンペ応募者へのメッセージ
地方再生を行っていく時、どのような場所でも産業や地域の特性を慎重に見極めることが大切になります。高岡では工芸や地場産業、食や文化といった地域固有の要素をどう暮らしと結びつけるか。また、外部の人が訪れる理由をどう作るか。
その視点がないと、場所単体や建築だけの価値では成立しません。
設計においては、ミクロな追求をしていくだけでなく、もう少し引いた視点で都市や地域を見ることが必要です。
高岡は歴史があり、城下町としての要素と職人の文化が混ざりながら、独自のバランスで成り立っているため、一般的な地方エリアの「型」には当てはめにくいまちです。
逆に言うと、高岡ならではの特徴をまだまだ見出すことができるとも感じます。
ひとつ不思議に思っているのが、高岡には祭りがとても多いことです。地域のエネルギーが外に出る仕組みが日常的に存在しているように感じます。
僕の出身地でもある金沢では祭りは少ないのですが、高岡に来ると、来るたびにどこかで祭りをしている印象があり、人影が少なかったまちに、どこから集まったのだろうかというぐらい人がわーっと出てきてとても賑やかになります。
なぜ高岡に祭りが多いかは解明されていないようですが、國本さん(フィールドワーク サポーター)たちが行っている「市場街(いちばまち)」も、こうした地元の風習と若い人たちの新たな取り組みとがかけ合わさって、高岡の未来をクリエイトする素敵な取り組みです。
そうした文化的な土壌を新たな視点で捉え直すことが、今後の変化の基盤になっていく可能性を感じています。
今回応募者の皆さんには、私たちがまだ気づいていない高岡の魅力を発掘していただき、これから展開する高岡のまちづくりと合わせて、地方エリアにおける新たな賃貸住宅のあり方(住まい方)を一緒に考えたいです。







