最優秀賞
街に残る空き工場を拠点とした,クリエイターや本作りをする人たちの営みが街の風景となるエリアづくり
製本街の本づくりの堂 ──町工場をつなぐ拠点
三田雄貴(横浜国立大学大学院)

三田雄貴氏.
【敷地】
東京都文京区小石川
【抽出した地域の課題】
大手印刷会社と下請けという関係によって数多くの印刷・製本業社がこの地に集積していたが,下請けから脱却して小石川を離れたり廃業する工場が増え,跡地が駐車場やマンションといった場所に変わってきている.
【賃貸の仕組み】
印刷・製本だけではなく,ライターやイラストレーターといった人を増やしたり,クリエイティブな街に変化させる.その中心に,シェアオフィス,ショップ,印刷工房,撮影スタジオなどで構成される「本づくりの堂」をつくり賃貸収入を得て,さらに周囲にある工場もスタジオ付き賃貸住宅にしたり,地域にある教育機関と連携して,本づくりを高め合う場所を構築する.
【建築空間】
「本づくりの堂」では,木造部材でトラス架構を組み伽藍堂のような空間をつくり,1階にホールを設けてさまざまな人が使える場所としている.2階は本のショップや事務室,3階はクリエイターのシェアオフィスで,吹き抜けなどを設けて賑わいを創出.この「本づくりの堂」を足がかりに,周囲にある町工場を利用したスタジオ付き賃貸住宅をつくっていく..
◯丁寧なリサーチを通じ,これからの地域,賃貸のあり方が提案されており好感が持てる.産業構造や技術開発によって淘汰されてしまう業態を新しいかたちで支えていく点でも興味深い.(千葉)
◯地域の生業をきっちりと読み取り,それに対する提案として街自体の再生に繋がっている点がよかった.建築の提案も細部にわたっていた.(赤松)
◯大規模開発にならないエリアの再生のあり方で,コミュニティの顔が見える提案だった.中央のユニットにもう少しコンテンツがあってもよかった.(横川)
◯中央に大きな建物をつくらなくても,コンパクトに始められる余地はあった.小さな工場で1,2軒実践できれば,出版社を巻き込んで展開できる可能性を感じた.(木下)