主催:大東建託株式会社  後援:株式会社新建築社

最新情報

2017年3月27日
「審査講評」ページをアップしました。
2017年3月9日
「2次審査結果発表」ページをアップしました。
2017年2月17日
公開2次審査観覧者募集の受け付けを終了しました。
2017年1月27日
「1次審査結果発表」ページをアップしました。
2017年1月13日
「公開2次審査観覧者募集」ページをアップしました。
2017年1月11日
応募登録の受け付けを締め切りました。
2016年9月1日
ホームページをオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
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過去のコンペ

審査講評

 

小泉雅生

2次審査のプレゼンテーションを聞いて,1次審査の印象から評価が変わったものが今回は多くありました.賞金を6等分にしてもよいくらい,みなさんの評価は僅差だったと思います.今回の「進化する賃貸住宅」は,正直私たちにも答えを出すことが難しいテーマでした.まちづくりの仕事に関わっていると,どのまちも縮小が進んでいて,まちづくりの関係者と「5年後の街」を考えてもネガティブな話になることが多いですが,たとえば50年,100年といった随分先の未来を考えると,さまざまなアイデアが生まれてきます.最優秀賞の「贅沢になる部屋」(松田・平川案)は,「進化」を大変ポジティブに捉えていたことが勝因だったと思います.人が欲望を持ち続けることで徐々に進化へ発展していく考え方は,非常に新鮮でした.また,エネルギーを核として新しいライフスタイルを提示した「YUTO-RI(ユートピア+里)」(山口案)や,文化的条件がフラットになる未来の社会において,建築と建築家のあり方を提示した「賃貸細胞進化論」(和田案)にも,「進化」に対する前向きな姿勢を感じることができました.そのほかに,目まぐるしく変化する東京で,時間を軸にして新しい社会の価値を想像した「町の時日を借りて栖む」(羅・邵案)にも心動かされました.今回は発想のバリエーションが豊かな6組に発表してもらえて大変満足しています.賃貸住宅の新たなあり様をみなさんと議論できたことに感謝いたします.

 

五十嵐淳

今回のテーマである「進化」について自分自身でも明確な答えが出ないまま審査に臨みましたが,実に多様なアイデアに触れられて面白かったです.個人的には,社会概念の未来像まで読み取れた「賃貸細胞進化論」(和田案)の提案に共感をもてました.意識的でない人も多いですが,建築は常に社会を受け入れて成り立っているという意識に立ち返る必要があります.「進化」を考える時,私たちは無意識に今置かれている社会状況を前提に想像しがちですが,彼の提案では,資本主義社会が全世界の隅々にまで浸透し,文化や技術面において世界の水準がフラットになった社会が想像されています.現状の延長線上にあり得るがまったく違った社会概念,そういった背景まで提案されている点を高く評価したいです.「YUTO-RI(ユートピア+里)」(山口案)は思考,プレゼンテーション,具体的な建築物の提案,すべてにおいて素晴らしい完成度で十分な魅力がありました.ただ,その見つめる思考の飛距離に陰りが感じられたので,もっと広がりのある思考をベースとした提案であってほしかったです.今回の審査会では,単に建築的なアイデアだけではなく,そうした社会の概念にも触れながら議論できたことはとても有意義でした.

 

鍋島千恵

今回のテーマから,私自身は想像できるような「変化」ではなく,まだ見ぬ予測不可能な「進化」が示された提案を期待していました.2次審査に進んだ6組はどれも想像が膨らむ提案でした.「積み重なる,それぞれの記念碑」(大村案)は今の賃貸住宅のあり方とはかけ離れた,そこに住んだ痕跡を積極的に残すというコンセプトと,記憶の塔のドローイングが印象的である一方,背後にある賃貸住宅と切り離され過ぎていたことが残念でした.時間と空間を絡めて「進化」を導き出してくれた「町の時日を借りて栖む」(羅・邵案)は,最終的な住宅としてのカタチが見えにくい点が惜しかったと思います.最優秀賞の「贅沢になる部屋」(松田・平川案)は,明快に新しい風景を描いていましたが,私としてはもう少しまだ見ぬ「進化」を追求して欲しかったです.最後に,私が最も興味を抱いた「YUTO-RI(ユートピア+里)」(山口案)は縮小社会を否定的に捉えるのではなく,都市を積極的に凝縮し新しい生活像を,臆することなく建築として描いていることに共感しました.今回のテーマ設定によるものかもしれませんが,前回までの提案から比べると賃貸住宅そのものを批評的に捉えたアイデアが多くありました.次回も,賃貸住宅の本質を問いながらもリアリティのあるアイデアに出会えることを期待します.

 

小林克満

第5回となる本コンペに多数のご応募をいただきありがとうございました.今回はテーマが難しいという声を聞きましたが,その分小手先ではなく,現状社会や賃貸住宅の行く末を深く考えてもらえる回になったと思います.2次審査に進んだ6組それぞれが正面からテーマを捉えて,社会問題を「進化」によって解決する姿勢が見られました.「贅沢になる部屋」(松田・平川案)は,1次審査時にコンセプトの希薄さへの懸念もありましたが,2次審査で発表を聞くと,都市において生かされてない空間をより価値のあるものへ進化させようという筋の通った考え方があり,ネガティブに捉えられがちな「欲望」に価値をおくことで,進化のエンジンになり得ると改めて認識できました.そのほかにも多様なベクトルを持った提案が見られて,有意義な議論がなされたと思います.私たち審査委員も「進化する賃貸住宅」はどういうものかを自身に問いながら審査をしていました.次回のコンペでも,これからの社会に対して賃貸住宅はどのようにあるべきなのか,応募者のみなさんと一緒に考えられるテーマを出せればと思います.これからもどうぞよろしくお願いいたします.