主催:大東建託株式会社  後援:株式会社新建築社

最新情報

2013年2月28日
審査講評をアップしました。
2013年2月4日
2次審査結果発表をアップしました。
2013年1月30日
公開2次審査観覧者募集を締切りました。
2013年1月23日
1次審査結果発表をアップしました。
2013年1月9日
登録・作品提出を締切りました。
公開2次審査観覧者募集を開始しました。
2012年9月3日
ホームページをオープンしました。
応募登録の受け付けを開始しました。
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審査講評

 

小泉雅生

経済状況の変化や3.11の東日本大震災によって,人々の意識もまた社会も変わりつつあります.建築が社会へと果たすべき責任,期待される役割も変わってきているように思います.今回のコンペの「風景をつくる賃貸住宅」というテーマは,家族という単位が変化している中での人のつながり,人と街のつながり,住まい方,エネルギーの融通など,さまざまなことを考えるよい機会だったと思います.実は,賃貸という形式の集合住宅について,これまで我々はあまりきちんと考えてこなかったように思います.本当は賃貸集合住宅が果たすべき役割は,いろいろあるはずです.住民に提供すべきサービスもありますが,木材を使うといったつくり方の課題もあります.はじめのテーマ会議ではいろいろな話が議論されました.その中で,第1回目は「風景」をテーマとして,新たな賃貸住宅の姿を募った訳です.賃貸住宅がつくる風景とはどういうものだろうか,街の風景に寄与する,あるいは風景をつくり出すにはどんなことがあり得るのか,ということです.応募案を見ていくと,生活を開いて風景をつくっていこうとする「住み開き」とでも呼べるような考え方を取り入れた提案が多く見られました. 2次審査に進んだ6組以外にも,シェアハウスのようなかたちで賃貸住宅のこれからを示した「不完結な部屋たち」(村部・瀬川案),1階部分でユーティリティを共有しシェアの風景が展開する「生活がつくる風景」(鈴木案),あるいは住戸のすきまを積極的につくろうとした「SPREAD CITY」(松島案)など気になる提案がいくつもありました.それは暮らし方の提案のひとつとしてあり得ると思う一方で,我々設計者はハードとしての風景をどうつくるか,建築自体がつくる風景ももっと考えなければならないように思います.今回の審査を終えて,またいろいろなテーマが見えてきたところです.来年のコンペの中で,テーマ設定も含めて生かしていきたいと思います.

 

五十嵐淳

今回の審査では,個人的なアイデアで終わっていないこと,建築の普遍性,広がりを持っている案であるかを意識しながら審査しました.その観点で見ると,「9+1 連なるやね」(堀江・小林案),「所有する12の階段住居/占有と共有の共存」(松田・太田案)は,どちらもさまざまな場所に応用可能な飛距離を持ったアイデアだったと思います.ただ,審査中に議論になりましたが,アイデアはよいのにきちんとデザインしていないのが気になります.アイデアコンペであれ,実施であれ,アイデア段階と現実に至った時の整合性が,バランス良くでき上がると相対的にすばらしい建築になります.今後は,思いついたアイデアをどう具体的に見えてくるかたちに落とし込んでいくかも,もっと考えてもらえたらと思いました.

 

鍋島千恵

今回の審査では,議論が白熱し,なかなか最優秀賞が決まりませんでした.全体的に「賃貸」に着目した提案が少なく,「建築」で風景をつくっているに過ぎないという議論もありました.そんな中で,「9+1 連なるやね」(堀江・小林案)のプレゼンで,ふたりが「風景というのは,賃貸住宅に住む人だけでなく,周辺に住む人たちのものとしても考えるべきで,そう考えた時,住んでいる人の存在が外まで溢れ出ることを目指した」と言っていたのが印象的でした.そういう視点で見ると,賃貸に言及していないものも,新たな風景をつくる可能性は感じられました.審査全体を振り返ると,1次審査の時に,既存の建物を活用しながら提案するアイデアをどう捉えるか議論し,今回は新しくつくる提案の方を積極的に評価するかたちになりました.しかし,社会状況から考えて,今後既存のストックをどう活かしていくかは非常に重要です.来年はそのテーマももっと議論できればと思います.

 

浅野秀樹

記念すべき第1回目の本コンペに,多数ご応募いただきありがとうございました.はじめての試みで審査を楽しみにしておりましたが,作品を拝見し,皆さんの中に「賃貸」であることの意識があまり感じられないことに少し衝撃を受けました.現在,総世帯数の約36%の人々が賃貸住宅で暮らしています.以前は,仮住まいというイメージでしたが,今はライフスタイルに合わせた住まいが選べて,身軽であることなどが逆に支持されています.このような時代を考えると,賃貸住宅の役割やそこに求められるものは広がっているのではないでしょうか.今回をスタートとして,賃貸住宅の認知をもっと高め,賃貸住宅のあり方をもっと皆さんと一緒に考えていきたいと思います.今回入賞された24組に限らず,応募案には多数の面白いアイデアがありました.社内で応募者と協働して具現化するプロジェクトなども試みていきたいと思います.